暑い時期になると高齢者の人が熱中症にかかって救急搬送されたとよく報道されるけれど、水分不足にならないようにするにはどのような対策が望ましいのかよくわからないと感じている人はいませんか?
この記事では高齢者の水分不足が身体にもたらす影響から水分不足にならないようにするための対策まで詳しくご紹介します。
高齢者は脱水症になりやすい
人間の身体は約60%が水分によってできていますが、この水分が不足した状態が脱水症です。
水分不足や嘔吐、下痢、過剰な発汗などの水分喪失量の増加が原因で引き起こされ、脱水が重度になると内臓へのダメージが加わって多臓器不全を引き起こし、重症化する場合もあります。
脱水症の主な症状は次の通りです。
- のどの渇き
- 口の中や舌、肌の乾燥
- 身体のだるさ
- 立ちくらみ(起立性低血圧)
- 頭痛
- 吐き気
- 脈拍が早くなる(頻脈)
- 筋肉の痙攣
- 微熱
- 食欲低下
- 血圧低下
高齢者の場合重症の脱水症でも症状が軽かったり、微熱や下痢、嘔吐などささいなきっかけで脱水症に陥ることがあったりするため、特に注意が必要です。
水分不足のサイン
身体が水分不足になると、どのようなサインが出るのでしょうか。
身体が出す水分不足のサインとその対処方法について表にまとめてみました。
水分不足のサイン | 対処方法 |
頭痛やめまい | ・体内の水分が5%以上失われると起こるので積極的に水分補給をする |
・水分補給のタイミングや量を見直す | |
便秘 | ・便を排泄するために必要な水分が足りないので起床したらコップ1杯の水(200ml程度)を飲むようにする |
汗が出ない・唾液が出にくい | ・汗や唾液となる水分がない状態なので、体温が調節しにくくなったり、空気中のウィルスに感染したりするのを予防するためにも定期的な水分補給を行う |
尿の色が濃くなる | ・尿の色が濃いほど水分不足が深刻な状態であるため、厚生労働省のホームページにある尿の色で脱水症状をチェックできる表に基づき適切な量の水分補給を行う |
爪を押して離すとピンク色に戻るのに3秒以上かかる | ・脱水症の疑いがあるため水分補給を行い受診する |
手の甲をつまんだ時跡が消えるのに3秒以上かかる |
高齢者が水分不足を起こした場合、身体から上記のようなサインが出ていても自分では見落としてしまうことがあるため、周囲の人が適切に見守りや声がけをすることが大切です。
参考:厚生労働省あんぜんプロジェクト「尿の色で脱水症状チェック」
脱水症対策
高齢者が水分不足による脱水症を引き起こさないためには、どのくらいの水分を摂取するのが望ましいのでしょうか。
2022年7月現在厚生労働省が行っている「健康のため水を飲もう」推進運動のホームページには、1日の水分摂取量の目安として食事から1リットル、飲み水から1.2リットル、体内で作られる水0.3リットルで合計2.5リットルという数値が記載されています。
これらの数値を基に、高齢者の人が水と食事からどのように水分補給を行えばよいのかをご紹介します。
水から水分摂取する
厚生労働省が2020年に発表した「日本人の食事摂取基準」では本来人間に必要な水分摂取量を性別・年齢・身体活動レベル別に算定するための根拠はいまだに十分には整っていないとされています。
そのため「健康のため水を飲もう」推進運動のホームページで目安として示された1.2リットルを目標に水分摂取をするのは高齢者にとって大切なことですが、この分野において研究が進み高齢者にとっての新たな基準が算定されたら、それに合わせて水分摂取量を変えていくことが重要だと言えるでしょう。
2022年7月現在「健康のため水を飲もう」ホームページでは、水分不足になりがちなタイミングの「入浴後」と「起床時」に合わせて「あと2杯」水を飲むことが推奨されています。
高齢者の脱水症を予防するためには、入浴後と起床時に積極的に水を飲むよう声がけをすることが大切だと言えるでしょう。
食べ物から水分摂取する
「健康のため水を飲もう」推進運動のホームページでは食事からの水分摂取量として1リットルという数値が目安として示されています。
文部科学省の「食品成分データベース」では食品に含まれる水分量を検索することができるため、日本人がよく食べる食品について表にまとめてみました。
食品名 | 水分量(可食部100gあたり) |
こめ(精白米、うるち米) | 60g |
うどん | 75g |
もやし | 92g |
きゅうり | 95.4g |
鶏肉 | 62.8g |
あじ | 65.3g |
いわし | 57.8g |
べにざけ | 63.4g |
この数値を見ると、1日3食バランスの良い食事を取っていれば、食事から1リットルの水分を摂取するのはそう難しくはないと言えるのではないでしょうか。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)<参考>水」
参考:厚生労働省「『健康のため水を飲もう』推進運動」
参考:文部科学省「食品成分データベース」
些細なことでも水分不足のサインを見逃さないようにしましょう
高齢者は水分不足により脱水症を引き起こす可能性が高くなるため、身体の出す水分不足のサインを周囲の人が見逃さず、1日2.5リットルを目安に水分摂取をしてもらうよう心掛けましょう。
この記事も参考にして、高齢者ご本人の体調に合った水分摂取の方法を見つけてみてください。