老人ホームの食事、本当に美味しくないの?入居前に確認するポイントや入居後にまずいと言われた時の対処法

「老人ホームの食事は美味しくない」という声を耳にすることがあります。このような評価があると、ご家族としても心配になりますよね。家族を介護施設に預ける際には、施設の食事の質が気になるところです。食事の美味しさは、老人ホームを選ぶ際の大切なポイントのひとつ。ご家族の健康と満足度を考えると、食事の評判をしっかり確認しておくことが重要です。

老人ホームの食事が「まずい」と言われる理由とは?

卵パックに入った卵に哀しい顔が書いてある

老人ホームの食事に対して「まずい」という意見が出る背景には、以下のような理由があります。

  1. 塩分制限
  2. 選択肢の少なさ
  3. 外部委託
  4. 冷めた料理の影響
  5. メニューのマンネリ化

もちろん、味やメニューの好みは個々に異なりますので、すべての入居者が満足する食事を提供するのは難しい課題です。しかし、これらの要素を理解することで、老人ホームの食事に対する見方も少し変わるかもしれません。

塩分制限の影響

老人ホームで提供される食事は、まず栄養面が優先されます。その結果、味付けが控えめになりがちです。管理栄養士が塩分やカロリーを厳しく管理して献立を作成しているため、塩分が少なめで、野菜や魚を中心としたメニューが多くなります。

ただし、入居者一人ひとりの体調や健康状態に応じて、個別に食事が調整されています。例えば、咀嚼力が低下している方には、一口サイズにカットしたり、余分な塩分やカロリーを控えた食事が提供されます。また、ミキサー食やソフト食など、調理が難しい介護食も、その人の介護度や身体状況に合わせて用意されます。

食事の選択肢が少ない

老人ホームでは、日常の食事において選択肢が限られていることがあり、それが不満の原因となることがあります。自宅で好きなものを自由に食べていた方にとって、決められたメニューのみを食べる環境は、自由が制約されると感じるかもしれません。外食の機会も限られるため、食事を楽しむ機会が減り、それが「食事がまずい」という感覚に繋がることもあります。

また、主食の選択肢が少なかったり、おかずよりもご飯の割合が多いなど、バランスに不満を感じる方もいます。しかし、最近では「和食・洋食」から選べる施設も増えており、少しずつ選択の幅が広がってきています。

外部委託による食事

施設内に広い調理場を持たない老人ホームでは、外部業者や宅配弁当を利用して食事を提供するケースがあります。この場合、冷凍食品を使ったおかずや、施設内で炊いたご飯が出されることもあり、施設内調理と比べて見劣りすると感じられることがあります。これが、「食事がまずい」と言われる一因です。

しかし、外部に委託されているからといって、必ずしも美味しくないわけではありません。たとえば、チルド調理は塩分が食材に浸透しやすく、かえって味を引き立てることもあります。また、最近の宅配弁当は、カロリー調整やムース食など、年配の方でも安心して楽しめる工夫がされています。質の高い食事を提供する業者も増えてきているため、美味しい食事を届けてもらうことも十分可能です。

冷めた料理の影響

介護施設での食事に関して、よく聞かれる不満のひとつに「料理が冷めている」という問題があります。料理は温度によって美味しさが大きく左右されるため、温かい料理は温かいまま、冷たい料理は冷たいまま提供されるのが理想的です。しかし、食卓に運ばれたときにご飯が冷めていたり、サラダやデザートがぬるくなっていたりすると、本来の美味しさが損なわれてしまいます。

また、料理の温度が味覚に与える影響も無視できません。例えば、低温では旨味を感じにくくなることがあります。このように、料理が冷めているだけで「まずい」と感じられてしまうこともあります。これを防ぐためには、スムーズに食事を提供できる施設の運営体制が重要です。

メニューのマンネリ化

最初は美味しく感じていた食事も、毎日同じようなものが続くと、徐々に飽きてしまい、食欲が湧かなくなることがあります。介護施設においては、食事が一日の中での楽しみのひとつとされることが多いです。そのため、食事が繰り返し同じような献立だと、生活の中の貴重な楽しみが減り、「この施設の食事はまずい」と感じてしまう原因になります。

この問題を解決するためには、季節のイベントに合わせた行事食などを取り入れるといった工夫が効果的です。少しの変化でも、食事が楽しみになる要素を増やすことで、入居者の満足度が向上するでしょう。

高齢者が食事をしないことで生じる問題

テーブルの上に和食がある

介護施設での食事が「まずい」と感じられることは、利用者さまの食欲低下につながり、管理栄養士やスタッフにとっては大きな悩みの種です。食事が美味しくないことで引き起こされる問題は、以下のように多岐にわたります。

低栄養状態のリスク

食事を拒否することで、摂取する栄養が不足し、低栄養状態に陥る可能性があります。栄養が不足すると、体力が低下し、免疫力も弱くなります。最終的には、病気を引き起こす原因となり、健康を損なうことがあるため、注意が必要です。

食事介助の困難さ

美味しくない食事を無理に食べさせることは、利用者さまにとって困難であり、食事介助がスムーズに進まないことがあります。これにより、介護スタッフの負担が増し、介護の質が低下する可能性があります。

ストレスと不満の増加

食事が美味しくないことで、利用者さまのストレスや不満が溜まりやすくなります。これが原因で、職員やご家族との間でトラブルが発生することも考えられます。食事が楽しみの一部である高齢者にとって、食事の満足度は生活の質に直結します。

食事に対する老人ホームの取り組み

老人ホームでは、食事が単なる栄養補給だけでなく、入居者の満足度を高める重要な要素とされています。以下に紹介する3つの取り組みは、食事をより充実させるための工夫です。

季節やイベントに合った献立

多くの老人ホームでは、季節やイベントに合わせた献立を提供しています。例えば、お正月にはおせち料理やお雑煮、夏にはゴーヤなどの旬の食材を使用したメニューが取り入れられます。

季節ごとの変化を感じることで、日常生活にメリハリを与え、普段とは違った食体験を楽しむことができます。これにより、認知機能の低下予防にもつながるとされています。また、一部の施設では、マグロの解体ショーや手打ちそば体験などのイベントを開催し、入居者に食事を楽しみにしてもらえる環境づくりにも力を入れています。

調理師の顔が見える食事

食材や調理師の顔が見える取り組みも行われています。例えば、食材の生産者の顔写真や農園の情報をポスターに添付することで、安心して美味しい食事を楽しむことができます。

また、施設のパンフレットに厨房の様子や調理師の顔写真を載せているところもあります。食事の品質や安全性を重視する方は、これらの情報を確認することで、より信頼感を持って食事を楽しむことができるでしょう。

メニューの選択式

一部の老人ホームでは、食事の内容を入居者が選べるシステムを導入しています。栄養バランスや健康に配慮しつつも、入居者が「和食」「中華」「肉」「魚」など、複数の献立から自分の好みに合わせたメニューを選べるようにすることで、食事の楽しみが増します。

選択肢が豊富であることで、食事がより楽しく、満足度が高まる方も多くなります。食事の自由度が上がることで、入居者の食事体験がより豊かになるとされています。

老人ホームの食事について確認するポイント

テーブルに載ったスープと鍋を上から見た写真

老人ホームを選ぶ際、食事の内容や苦情への対応だけでなく、以下の5つのポイントも確認しておくことが重要です。

献立表を確認する

見学時には、施設が作成している献立表を確認することが大切です。献立表をチェックすることで、日々の食事に対する工夫や配慮がわかります。多くの入居者にとって、食事の時間は楽しみの一部です。献立を見て、食欲をそそられるか、料理のイメージがつきやすいかなどを評価しましょう。

可能であれば、週単位や月単位の長期的な献立表を見せてもらうと良いでしょう。これにより、以下の点を確認できます:

  • 入居者の好みに合ったメニューが提供されているか
  • メニューのバリエーションが豊富であるか
  • 同じようなメニューが繰り返されていないか

これらの情報をもとに、食事の質や楽しさをより具体的に評価し、施設選びの参考にしましょう。

朝食の様子を確認する

朝は一日の始まりに向けて準備が忙しい時間です。施設内でもこの時間帯は慌ただしくなりがちですが、それでも朝食がきちんと提供されているかどうかを確認することは、施設の食事に対する配慮を測る重要なポイントです。

朝食にしっかりと手をかけ、適切に提供されているかを見ることで、その施設が食事に対してどれだけ気を配っているかを読み取ることができます。朝食の質や提供方法がしっかりしている施設は、日常的に食事に対する細やかな配慮が行き届いている可能性が高いです。

老人ホームの食事を試食する

入居を希望する老人ホームで、実際に食事を試食することで食事の充実度をチェックできます。料理の味や提供方法、入居者からのリアルな声を確認することが重要です。試食を通じて、どのような食器が使用されているか、どんな料理が提供されているかを実際に体験し、「またこのおかず?」という声がある場合は注意が必要です。

試食の際に確認すべきポイントは以下の通りです:

  • スタッフの配膳態度: スタッフが適切に配膳を行っているかを観察します。
  • 介助の質: 指先の衰えで箸やスプーンを使いにくい入居者に対して、適切な介助が行われているかをチェックします。
  • 介護用食器の有無: 使いやすく設計された介護用スプーンや食器が揃っているかを確認します。

おいしさに関しては、施設の食事の質にばらつきがあることもあります。食に力を入れている施設は新鮮な食材や季節感のある献立を取り入れ、調味料や調理法にこだわる一方、コスト重視で加工品を多用している施設もあります。さらに、使用している食器や食堂の雰囲気も食事の楽しさに影響します。

パンフレットの情報だけでなく、実際の食事を試食することで、より具体的な判断ができるでしょう。

食器や食事の際の介助は適切か確認する

入居者の自立を目指している老人ホームでは、食事の際は車椅子から椅子に移乗したり、自分で茶碗などを持てるように介護用の食器を揃えたりしています。

高齢者の方にとって食べることが楽しい時間になるかどうかは、こうした施設職員による食事介助も重要なチェックポイントです。

どこで食事をつくっているか確認する

老人ホームの食事は、主に外部に委託しているケースと施設内で調理しているケースに分かれます。それぞれの違いを理解することで、食事の質についてより良い判断ができます。

【調理を外部に委託しているケース】

施設内に大きな厨房がない場合、食事を外部の業者に委託していることが一般的です。外部に委託することで、食事サービスにかかる費用を軽減できる一方で、以下のような点が問題になることがあります:

  • 味付けの調整が難しい: 外部業者が提供する食事は、大量調理のため味付けが一律になりがちです。
  • 見た目や品質の低下: 冷凍食品や加工品が多く使用されることがあり、解凍時に水分や塩分が流れ出て味が薄くなることがあります。

【施設内の厨房で調理しているケース】

食事に力を入れている施設では、施設内のキッチンで調理している場合が多いです。施設内で調理するメリットには以下が挙げられます:

  • 新鮮さと味の保持: 少量の塩分でも適切な味付けが可能で、素材本来の味を楽しめます。
  • 柔軟な対応: 食材や調理方法に対する柔軟な対応ができるため、入居者のニーズに合わせた食事を提供できます。

食事の質を確認するために、施設の調理体制についてもチェックしておくと良いでしょう。

入居後に食事がまずいと言われた場合の対処法

キッチンで料理をする笑顔の男女

面会時に食事を持ち寄る

面会時に施設に連絡し、食べ物を持ち込むことができます。例えば、漬物や梅干しなどの追加の食材を持参し、指定の食事と一緒に配膳してもらうことが可能な施設もあります。ただし、栄養管理やカロリー計算を行っているため、頻繁には行えません。食事を持ち込む際は、必ず事前に施設職員に相談しておきましょう。

自炊ができる老人ホームもある

居室内にキッチンがある施設では、自分で料理をすることが可能です。たとえば、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などは、日常生活のように買い物をし、食事を準備できます。自炊できる施設を探すのも一つの選択肢です。

施設職員や相談窓口に相談する

食事に対する不満がある場合、家族が直接施設に相談することも有効です。食事の美味しさや満足度は個々の好みによるため、施設側がその問題に対処する必要があります。もし施設側での対応が改善されない場合は、外部の介護相談窓口に相談することも考えられます。介護相談員が施設を訪問し、食事内容や入居者の様子を把握して改善提案を行うことがあります。

多くの入居者が食事に不満を持っている場合は、施設側で食事体制の見直しが行われる可能性もあります。

老人ホームの種類による食事の違い

老人ホームの食事内容やサービスは、施設の種類によって大きく異なります。以下に、各施設の特徴と食事の提供方法について解説します。

自分で調理や食事提供サービスが利用できる「サ高住」

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、自立した方や要介護認定を受けていない方が入居できる施設です。居室や共用スペースにキッチンが設置されており、入居者は自分の好きな食べ物を調理することができます。施設が提供する食事に切り替えることも可能です。このため、自分で調理を楽しみたい方や必要に応じて食事提供サービスを利用したい方に適しています。

食事関連イベントが豊富な「住宅型有料老人ホーム」

住宅型有料老人ホームでは、個別に食事を提供し、噛む力や飲み込む力、アレルギーの有無などに応じた食事を楽しめます。さらに、食事関連のイベントを積極的に実施する施設もあり、入居者の家族を招待して賑やかな食事の時間を過ごすことができます。一部の高級施設では、一流のシェフによる料理や、食事の時間を自由に選べるサービスも提供しています。自分で介護サービスを選び、利用することができます。

管理栄養士が配置されている「介護付き有料老人ホーム」

介護付き有料老人ホームでは、栄養士や調理員が常駐し、カロリーや栄養バランスを考慮した食事を個別に提供します。要介護度が重い方や看取りにも対応しており、咀嚼や嚥下機能の低下に配慮した食事形態や介助が充実しています。定額で介護サービスが利用でき、追加費用の心配もありません。食事介助が必要な方や重度の介護が必要な方に適しています。

入居者同士で調理を行う「グループホーム」

グループホームは、少人数で共同生活を送りながら認知症の症状を緩和する施設です。入居者は家事の役割を分担し、食事や掃除を行います。調理経験がない方でも、施設職員のサポートを受けながら安心して料理できます。入居者同士のコミュニケーションを通じて、脳の活性化を促し認知機能の衰えを防ぐ効果が期待できます。認知症を理由に施設入居を検討している方におすすめです。

老人ホームを検討するときは食事も重要なポイントです

高齢者施設での食事は、日々の暮らしの質を大きく左右します。美味しく楽しい食事が、毎日の活力や満足感につながります。施設選びの際には、費用やサービスの他に、食事内容もしっかりと検討し、自分に合った施設を選んでください。

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