日本では、40歳になると法律で介護保険に入ることが義務づけられています。
介護保険に入ると、将来介護が必要になったときに特定のサポートが受けられるのですが、いざ必要になったときにどんなサービスがあるのか、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。
介護がいつ必要になるかは予測できないので、将来のために介護保険制度をしっかり理解しておくのはとても重要です。
この記事では、介護保険制度の基本的な仕組みや、保険料の支払い時期、介護保険で受けられるサービスの内容や使い方について分かりやすく説明します。これを読んで、将来に備えるための一歩を踏み出してみませんか?
目次
介護保険制度とはどんな制度?
介護保険制度は介護が必要な人たちにお金を支援して、適切なサービスを手に入れやすくするための保険制度です。自立支援や家族の介護の負担を軽減するのが目的です。
この「介護保険制度」、自治体が運営してて、保険料と税金で成り立っています。40歳以上になると、これに入ることが義務付けられます。保険料を払って、自治体の窓口で手続きをすると、介護サービスを受ける資格がもらえるかどうかの審査があります。
認定されると、介護サービスを受ける時に1割から3割(年金収入などによって変わります)を自分で負担することになります。介護が必要になった時、この制度があると心強いですよね。
介護保険制度のなりたち
2000年4月からスタートした「介護保険制度」、その前は「措置制度」と呼ばれるものがありました。
以前の「措置制度」では、自治体が主体となっていて、ケアの手法や入所施設の選択が自由ではありませんでした。これって、利用者や家族には不自由だったんじゃないかなと思います。税金で成り立っていましたが、社会保障費が増えて財政が厳しくなり、自治体の負担もどんどん増えていきました。
しかし、1997年に「介護保険法」ができて、それに基づいて2000年に「介護保険制度」が始まりました。これで、利用者や家族がより自由にサービスを受けられるようになりました。
「介護保険制度」がスタートしたのは、社会保障費の増大と家族の状況の変化が大きな理由です。
1960年代には老人福祉制度ができ、70年代には老人医療費が無料になりました。でもその後、高齢者の数がどんどん増えて、医療費が高騰していきました。寝たきりの高齢者や、生活や介護の支援が必要な高齢者が長期入院することが増え、それが大きな問題になっていったんです。これを考えると、40代50代でも将来に不安を感じますね。
それに加えて、家族の構成が変わっていき、高齢者を家庭で介護するのが難しくなってきました。そんな中で、介護サービスへのニーズがどんどん増えて、「介護保険制度」が誕生しました。
法律も整備され、社会福祉法人や医療法人だけでなく、民間企業も介護事業に参入できるようになり、競争によってサービスの質も向上。これは利用者としてありがたいことですね。そして、3年に1度は介護保険法の見直しが行われ、社会情勢に合わせて有益なサービスを受けられるようになっています。これは進化していく社会に対応しているなと分かります。
「介護保険制度」は、少子高齢化や核家族化が進む現代の日本において、とても大切な社会保障の一翼を担っているんですね。これからもしっかりとサポートしてくれることを期待したいです。
介護保険3つの考え方
介護保険制度は、基本的に3つの考え方に基づいています。
自立支援 これは、サポートをする側(援助者)が主導ではなく、利用者自身が選択することで、保健医療サービスや福祉サービスなどを総合的に利用できる考え方です。これは、私たち利用者にとっても自分の生活スタイルに合ったサポートが受けられると思いますね。
利用者本位(利用者主体) 同じように、こちらもサポートをする側ではなく、利用者が自分で選択し、総合的に利用できるという考え方です。これは私たちが自分のニーズに合わせてサービスを受けるときに、より快適に感じられるポイントじゃないでしょうか。
社会保険方式 最後に、給付と負担の関係が明確な「社会保険方式」を導入しています。これは、支払った保険料に対して、具体的にどんな給付があるのか、負担と給付がしっかり関連している仕組みですね。これによって、安心感が生まれると思います。
介護保険料の支払いはいつから?金額はどうやって計算される?
40歳になると介護保険に入る必要があり、保険料を支払うことになります。これは私たちが年を重ねる中で気になるポイントですね。
40歳から64歳までの方は、健康保険と一緒に徴収されます。しかし、保険料の計算方法は全国健康保険協会や市町村国保、各健康保険組合によってバラバラです。私たちが加入している健康保険や共済組合によっても、給与からの天引きで半分が事業主によって負担されることもあるそうです。
介護保険料率も健康保険ごとに異なり、被扶養配偶者は医療保険と同じく免除されることもあります。
国民健康保険に加入している場合は、自治体が所得割、均等割、平等割、資産割の4つを独自に組み合わせて計算します。所得割は前年の所得に応じて算出されるので、自分の世帯の状況に合わせて計算されます。
65歳以上の方は原則として年金から天引きされますが、自治体によって異なります。つまり、介護の設備や要介護者の状況によって、支払い金額が違ってきます。
どのくらい保険料が取られるのか心配ですよね。負担が大きくなりすぎないように、低所得者の方には国の調整交付金が使われています。
介護保険サービスを受けられる対象者は?
どんな方が介護保険のサービスを受けられるのか、少し詳しく見ていきましょう。
まず、介護保険には「第1号被保険者」(65歳以上の方)と「第2号被保険者」(40歳から64歳までの方で医療保険にも入っている人)の2つの区分があります。
どちらも保険料は支払う必要がありますが、実際にサービスを受けるのは、基本的には第1号被保険者だけです。
第2号被保険者の方でも、介護認定を受けるとサービスの対象になりますが、その際にはがんや関節リウマチ、認知症などを含む特定の16疾病によるものが条件です。
介護保険で対象となる疾病(特定疾病)
- 末期がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 変形性関節症(両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う)
これらの疾病に罹患した場合、介護保険のサービスが受けられるようになります。ただし、具体的な条件や対象疾患があるので、健康状態によってはサービスの利用が可能かどうか、確認しておくことが大切です。介護保険は将来のことを考えるうえで、しっかり理解しておくと安心です。
要介護認定のしくみ
介護保険サービスを利用するためには、まずは要支援・要介護認定を受ける必要があります。これを申請する手続きについて、簡単に説明します。
まず、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で申請書を提出します。その後、役所の窓口で日程を調整し、認定調査員が自宅に訪れて日常生活や身体機能、認知機能などをチェックします。
そして、要介護認定が出た場合は、要支援が出たら地域包括支援センター、要介護が出たらケアマネジャーに相談します。ここで気になるのは、ケアマネジャーの選び方ですね。
自治体からもらえるケアマネジャーのリストをもとに、自分の生活に合った人を見つけましょう。相性が合わない場合は違うケアマネジャーに変更することもできます。私たちの大切な生活を支える相手なので、親身になってくれる方を見つけたいですね。
ケアマネジャーは「ケアプラン」と呼ばれる介護の計画書を作成します。これは、私たちや家族の希望を取り入れてくれる大事なものです。日ごろの介護で感じることや相談事も、気軽に話してみましょう。
将来のことや心の負担も相談できるので、お互いに気心知れた相手を見つけて、サービスを受ける前から安心感を得ることが大事です。そして、ケアプランができると、それに基づいてサービスを利用できるようになります。
要支援の方も、地域包括支援センターへ相談することで同じように進めることができます。連絡先が分からない場合は、市区町村役場の介護保険担当窓口に問い合わせてみましょう。これで、地域のサポートがしっかりと受けられるようになります。
要介護認定については以下の記事でも詳しく解説していますのでぜひご一読ください。
▶介護認定とは?区分の違い、認定基準、介護認定の申請方法など
介護保険のサービス
介護保険サービスにはいくつかのタイプがあり、主要なサービスは大まかに3つあります。
在宅サービス
これは、要介護認定を受けた方が利用できるサービスで、ホームヘルパーや看護師が高齢者の自宅を訪れ、介護や看護をサポートしてくれます。私たちが住む場所でサービスを受けられるのは心強いですね。自宅から介護施設に通ったり、数日間宿泊してリハビリや入浴を受けたりすることもできます。福祉用具のレンタルや購入にも介護保険が活用できます。気軽に利用できるのは助かります。
地域密着型サービス
こちらも要介護認定を受けた方が対象で、自治体が提供するサービスです。地域に特化した施設があり、夜間も含めた訪問介護や少人数の介護施設が用意されています。ただし、他の地域のサービスを利用することはできませんので、住んでいる地域のサービスを確認しましょう。
施設サービス
このサービスは、24時間体制の介護やリハビリ、療養などを提供する施設を利用できます。特に特別養護老人ホーム(特養)は料金が手頃なため、人気があります。ただし、全国で入所待ちの高齢者が23.3万人以上いるため、入所までには数年待ちという場合もあります。
サービスの利用料
介護保険サービスを利用する際の自己負担割合は、いくつかの要因によって計算されます。
年金収入とそれ以外の収入(不動産、利子、配当、雑所得など)の合計金額が自己負担の決め手となります。生活の中で感じるニーズに応じてサービスを受けることができる一方で、負担も気になるポイントですね。
原則として、公平を期すために1割の負担とされていますが、所得が一定以上ある場合は2割または3割ということもあります。自分の所得状況によって負担の割合が変わることを知っておくことが、将来の生活プランを考える上で大切です。
自己負担は1~3割
介護保険は、必要な時に使えるように、保険料や税金で運営されています。私たちの共同体が支え合い、安心して老後を迎えるための一翼を担っているのです。ただし、利用する際には所得に応じて1割から3割の自己負担が発生します。
介護保険がはじまった当初は、全員が1割負担でしたが、今は所得によって負担割合が変わるようになりました。この変更は、より公平にサービスを受ける人々に負担を分かち合ってもらおうという考え方からきています。
さらに、平成29年6月2日に改正された法律では、所得が一定以上の高齢者に対して、介護保険を利用する際の自己負担が最大で3割に引き上げられることが定められました。これは、将来的にもっと多様なニーズに対応するための一環ですね。
単身者の場合は年金収入が340万円以上の方が3割負担となる点は注意が必要です。
介護度に応じた支給限度額がある
介護保険には、私たちが1か月に利用できる上限金額が設定されています。これは、介護度合いによって異なる支給限度額で、この範囲内でケアマネジャーがケアプランを作成してくれます。
介護度が上がるほど、支給限度額も増えます。もしもっとサービスを受けたい場合は、全額自己負担になりますが、サービスを受けることができます。
下の表は、介護度に応じた支給限度額を示したものです。介護度は点数制で、1点あたり約10円から11.40円の単価で換算されています。要介護度が高いほど、自己負担も増えます。2021年4月時点の数字ですが、これだけの金額を毎月支払うのは経済的にも負担ですね。
介護度 | 支給限度額 | 1割負担額 | 2割負担額 | 3割負担額 |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
これだけの金額を毎月支払うのは経済的にも負担になる家庭もあると思います。
特別養護老人ホーム(特養)に入所している場合、負担が「負担限度額認定」により軽減されます。これは、収入や資産が少ない方をサポートするための制度で、自分の住んでいる自治体で申請して認定されたら、認定証がもらえます。
例えば、年金を含む収入が年間80万円以下の場合、特養を利用する際の居住費は多床室で1日あたり370円くらい、個室だと490円くらいになります。それに食費が1日あたり300〜390円くらいになり、低所得でも安心してサービスを利用できる制度があります。
介護保険制度の今後
2000年に始まった介護保険制度は、新しい制度のため手探りの段階で、現実に即した形にしていくため、3年ごとに見直しが行われています。これは、私たちの暮らしやニーズに合わせて、制度を進化させようとする試みです。
最近では、少子高齢化が思った以上に進展していることが明らかになり、それに対応する形で制度の改正が進められています。老後のサポートがどんどん重要になってきている中、制度も進化しながら、より良い形に整えていくのは大切なことですね。
要介護にならなった場合
介護保険の認定調査で要介護1~5までの認定を受けなかった場合、介護保険の給付を受けることは難しいですね。でも、安心してください。要支援1、2や非該当(認定なし)の方にも、将来的には要介護にならないようなサポートが充実してきています。
最新の動きとして、日常生活支援総合事業などが登場しています。これにより、要支援者の方々は訪問型や通所型のサービスを利用でき、要支援の認定がなくても、栄養改善や見守りなどのサービスを手軽に受けることができます。
介護保険外サービス
要介護の方が増え、そのサポートをしてくれる若い人が少なくなる中、介護保険サービスが今後縮小する可能性があります。
そこで注目されているのが、住み慣れた地域で自分らしい生活を続けるための「地域包括ケアシステム」の構築です。自分で助け合い、国の予算をかけない範囲で、保険外サービスを利用して自立した生活を目指すことが大切とされています。
保険外サービスには、民間企業が積極的に参入しており、それに対応するために厚生労働省・経済産業省・農林水産省が共同で「保険外サービス活用ガイドブック」を制作しました。魅力的なサービスや安全性、法令順守などを考慮して、高齢者たちの福祉向上に貢献してほしいですね。
まとめ
近ごろますます進んでいる核家族化の中で、家族だけで高齢者の介護をすることはますます難しくなってきました。そんな時に頼りになるのが、介護保険制度です。
介護保険は、社会全体で介護をサポートするためにできた制度です。高齢者や支援が必要な方、そして家族にとっては頼もしい存在といえるでしょう。ただし、介護保険は一定期間ごとに改正されるため、手続きやルールが少しわかりにくいことも事実。複雑な内容や審査までの期間も長いため、戸惑うこともあるでしょう。
でも、大切なのは、介護保険は私たちの味方なんです。疑問や不安があれば、まずはお住まいの自治体や担当窓口、地域包括支援センターに相談してみましょう。手続きがスムーズに進むよう、しっかりサポートしてくれるはずです。